東京地方裁判所 昭和51年(ワ)6465号
原告(選定当事者)
隠岐哲也
(ほか七名)
右原告(選定当事者)八名訴訟代理人弁護士
太田真人
被告
総評全国一般全明治屋労働組合
右代表者中央執行委員長
四方豊司
右訴訟代理人弁護士
植木敬夫
右当事者間の積立金返還請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
一 被告は、原告隠岐哲也に対し三万五六〇〇円、同永井国之に対し一万六八〇〇円、同中村一に対し二一〇〇円及び右各金員に対する昭和五一年八月一四日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告隠岐哲也、同中村一及び同永井国之のその余の各請求並びに同林健二郎、同日比生英輔、同岩崎恒雄、同朝原敦及び同長岡大然の各請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを三〇分し、その一を被告の負担とし、その二九を原告らの連帯負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告隠岐哲也に対し二四万六九五〇円、同永井国之に対し一六万五八〇〇円、同林健二郎に対し五〇万〇〇二〇円、同日比生英輔に対し二九万八八四〇円、同中村一に対し九万五二九〇円、同岩崎恒雄に対し一八万九〇四〇円、同朝原敦に対し一〇万二〇一〇円及び同長岡大然に対し六万七三二〇円並びに右各金員に対する昭和五一年八月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求の原因
1 被告は、株式会社明治屋、関東明治屋商事株式会社、関西明治屋商事株式会社及び株式会社明治屋食品工場(以下「会社」という。)の従業員をもって組織される労働組合である。
2 原告(選定当事者)ら及びその選定者ら(以下「原告ら」という。)は、別紙(略)第一ないし第八目録の各「被告組合在籍期間」欄記載の期間中被告組合の組合員であったが、同「至」欄の時期に被告組合を脱退した。
3 被告組合には、争議時の資金等に充てるための第一次、第二次各斗争資金積立金及び犠牲者救援積立金に関する制度があったが、右各積立金は一般組合費とは異なり、組合員個人の被告組合に対する預金の性質を有するものであって、会社が従業員に対する賃金支払の際にこれを組合費と一緒にチェック・オフし、被告組合に交付していたものである。
(一) 第一次斗争積立金について。
昭和三一年一〇月二七日の被告組合の中央大会において、争議期間中の組合員及びその家族の生活保障のために斗争資金(生活填補金)を積み立てることになり、全明治屋労組斗争資金(生活補填金)規定(以下「斗争資金規定」という。)が制定された。これが第一次斗争積立金の制度である。
右規定によれば、第一次斗争積立金の積立金額は一か月一〇〇円であって、これは被告組合の保管する組合員個人名義の預金であり、組合員が被告組合から自然離脱(退職、死亡又は非組合員となったとき)したときなど(第四条)に積立金と利息とが返済される旨定められていた。
原告ら(但し、広島支部関係の原告岩崎及びその選定者を除く。以下第一次斗争積立金については同じ。)は、右規定に基づき、第一ないし第五、第七及び第八目録記載の「第一次斗争積立金」欄の各金額をそれぞれ積み立てた。
(二) 第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金について。
昭和三七年一〇月の被告組合の中央大会において、前記積立金額が同年一一月以降一か月五〇円増額されて一五〇円になると共に、同積立金の名称も変り、第二次斗争積立金という名称で五〇円、また、犠牲者救援積立金という名称で一〇〇円が積み立てられることになったが、右各積立金の性質は第一次斗争積立金と同様に組合員個人の預金又はこれに準ずるものであった。
その後、昭和四一年一一月の被告組合の中央大会において、同年一一月以降の第二次斗争積立金の積立金額が一か月二〇円及び賞与時(年二回)各五〇円、また、犠牲者救援積立金の積立金額が一か月一〇円に変更されたのであるが、原告らは、右各積立金につき、第一ないし第八目録の「第二次斗争積立金」欄及び「犠牲者救援積立金」欄記載の各金額をそれぞれ積み立てた。
4 原告らは、前記のとおり被告組合を脱退し、その組合員たる資格を失ったので、斗争資金規定第四条又はその類推等によって、被告組合に対し、右各積立金の返還を請求することができる。
5 仮に、第一次、第二次各斗争積立金又は犠牲者救援積立金が預金的性質を有せず、組合規約等によってこれが返還を求めることが許されないものとしても、組合が分裂し、脱退者数が組合員数を上回り、右脱退者が集団的に権利行使をする場合には、組合財産の分割請求が認められるべきである。すなわち、昭和四八年七月当時の被告組合の組合員数は約一六〇〇名であったが、その後脱退が相次ぎ、同五〇年末には約三〇〇名に減じ、同五一年には約二五〇名、現在は約一七〇名に減少した。これを本件についてみれば、同四八年六月初め京都支店の被告組合員は六四名であったが、同月中に五八名が脱退し、訴外明治屋京都支店従業員組合(六二名)を結成し、原告隠岐及びその選定者ら(計二七名)は右従業員組合員であり、同四八年一〇月初め福井支店の被告組合員は二三名であったが、同年一一月中に全員が脱退し、同年一二月一日同福井支店従業員組合(三〇名)を結成し、原告長岡及びその選定者ら(計一七名)は同従業員組合員であり、同四九年一月初め新潟支店の被告組合員は三二名であったが、同月中に全員が脱退し、同新潟支店従業員組合(三二名)を結成し、原告永井及びその選定者ら(計二六名)は同従業員組合員であり、同四九年一月初め福岡支店の被告組合員は九〇名であったが、同月末に八八名が脱退し、同福岡支店従業員組合(八八名)を結成し、原告林及びその選定者ら(計六二名)は同従業員組合員であり、同四九年四月初め北九州支店の被告組合員は五九名であったが、全員が脱退し、同北九州支店従業員組合(五七名)を結成し、原告日比生及びその選定者ら(計三三名)は同従業員組合員であり、同四九年五月初め高松支店の被告組合員は三四名であったが、同年六月全員が脱退し、同高松支店従業員組合(三七名)を結成し、原告中村及びその選定者ら(計二九名)は同従業員組合員であり、同四九年八月初め広島支店の被告組合員は三二名であったが、同月中に全員が脱退し、同広島支店従業員組合(五〇名)を結成し、原告岩崎及びその選定者ら(計二七名)は同従業員組合の組合員であり、同五〇年八月初め岡山支店の被告組合員は二七名であったが、同年九月一五名が脱退し、同岡山支店従業員組合(一五名)を結成し、原告朝原及びその選定者ら(一五名)は同従業員組合の組合員である。このように被告組合員からの大量脱退と組合員数の激減及び各支店従業員組合の結成を考察すれば、昭和四八年六月から同五〇年九月までに被告組合は分裂したものということができる。そして、被告組合員数を上回る原告ら(合計二三六名)が集団して権利を行使しているのであるから、右各積立金につき、特段の事情のない限り、個々の組合員の積立額と同額の分割請求が認められるべきである。
6 よって、原告(選定当事者)らは、被告組合に対し、前記各積立金の返還及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和五一年八月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだ。
二 請求の原因に対する認否
1 請求の原因第1項記載の事実は認める。
2 同第2項記載の事実は不知。
3 同第3項記載の事実のうち、被告組合に争議時の資金等に充てるための第一次、第二次各斗争積立金及び犠牲者救援積立金の制度があったこと、第一次斗争積立金制度が設けられた経緯、斗争資金規定には、第一次斗争積立金の積立金額が一か月一〇〇円であって、これは被告組合の保管する組合員個人名義の預金であり、組合員が被告組合から自然離脱(退職・死亡又は非組合員となったとき)したときに積立金と利息とが返還される旨定められていたこと、第二次斗争積立金制度が昭和三七年一〇月の中央大会において設けられたこと、同年一一月以降、組合員は第二次斗争積立金として一か月五〇円、犠牲者救援積立金として一か月一〇〇円を積み立てることになったこと、同四一年一一月の中央大会において同年一一月以降の第二次斗争積立金の積立金額が一か月二〇円及び賞与時(年二回)各五〇円、また、犠牲者救援積立金の積立金額が一か月一〇円に変更されたこと、被告組合と会社間の同三四年一一月の組合費等に関するチェック・オフ協定が締結された後、会社が従業員に対する賃金または賞与の支給時に右各積立金についてチェック・オフをし、被告組合にこれを交付していたことは認めるが、原告らが被告組合の組合員であったこと、また第一次斗争積立金を積み立てたことは不知、その余の事実は否認する。
4 同第5項記載の事実のうち、昭和四八年七月当時の被告組合の組合員数が約一六〇〇名であったが、その後脱退が相次ぎ、同五〇年末には約三〇〇名に減じ、同五一年には約二五〇名に減少したこと、同四九年一月初めの福岡支店の被告組合員は九〇名、同年五月初めの高松支店の被告組合員は三四名、同年八月初めの広島支店の被告組合員は三二名及び同五〇年八月初めの岡山支店の被告組合員が二七名であったことはいずれも認めるが、原告らが被告の組合財産について分割請求権を有すること、同四八年六月初めにおける京都支店の被告組合員が六四名、同年一〇月初めにおける福井支店の被告組合員が二三名、同四九年一月初めにおける新潟支店の被告組合員が三二名、同年四月における北九州支店の被告組合員が五九名であったことはいずれも否認し、その余の事実は不知。
なお、被告組合において、組合員が大量に脱退したけれども、それは長期間にわたるさみだれ的、また集団的脱退であって、これをもって被告組合が分裂したものということはできない。
三 被告の反論及び仮定抗弁
(反論)
第一次斗争積立金に関し、斗争資金規定第四条は、右積立金の返還事由として、1項は、「自然離脱(退職・死亡又は非組合員)により非組合員となったとき、但し、反組合的行為により大会に於て除名されたときは返還しない。」、2項は、「大会においてこの規定を廃止したとき」と定めているが、全明治屋労働組合規約(以下「組合規約」)第七条が、組合員の脱退を認めない旨定めていることからも明らかなように、右「自然離脱」には脱退は含まれないのであるから、原告らの同規定第四条に基づく第一次斗争積立金の返還請求は失当である。
また、第二次斗争積立金及び犠牲救援積立金は、いずれも第一次斗争積立金とは異なり、組合員個人の預金の性質を有するものではなく、一般組合費であって、被告組合の有する闘争時などのための積立金に外ならないのである。すなわち、第一次斗争積立金は、組合員個人の預金であったため、これを組合闘争のためにも費消することができず、実質的には、労働金庫から闘争資金を借入れるための担保資金にすぎなかったので、同三七年一〇月の中央大会において、第一次斗争積立金制度を廃止し、闘争時に実際に使用しうる闘争資金を積み立て、組合財政を強化するために第二次斗争積立金制度が設けられた。また、犠牲者救援積立金は、組合活動による犠牲者を全組合員が共同して救済する趣旨の積立金であり、同三四年四月の中央大会において、毎決算期に生ずる剰余金から三〇パーセントを下らない額を犠牲者救援基金として積み立てる方針が決定されると共に、同年度は財政基金中より二〇万円を同基金として積み立てるものとされ、同三五年五月の中央大会において、全明労組合活動犠牲者救済規定が制定され、右基金の支出に関する運用規定が設けられたのである。そして、同三七年一〇月の中央大会において、組合規約中の組合費に関する定めにつき、「組合費は毎月本給の二パーセントプラス一五〇円を徴収する。但し、内訳は一般組合費二パーセント、斗争積立金五〇円(第二次斗争資金)、犠牲者救援金一〇〇円とする」旨の定めが設けられ、その後、同四一年一一月の中央大会において、右組合費が、同月より、「本給の二パーセントプラス八〇円、一時金からの臨時徴収は支給額の一パーセントプラス一〇〇円(年末、夏季とも同額)」と改訂されたことに伴ない、右組合費の内訳として、第二次斗争積立金が「月額二〇円と臨時組合費より五〇円(二回)」、また、犠牲者救援積立金は「月額一〇円」とそれぞれ改訂されたのである。
したがって、第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金は、組合費の一部であり、組合費については、組合規約上、自然離脱者に対してもこれを返済しない旨定められており(第八条)、第一次斗争積立金のようにこれが返済を認めた規定も存在しないから、原告らの第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金の返還請求は失当である。
(仮定抗弁)
1 仮に原告らが被告の組合員であり、その主張のとおり第一次斗争積立金を積み立てたとしても、同原告らは反組合的行為等のために被告組合を脱退したのであるから、斗争資金規定第四条1項の「組合員が自然離脱によって非組合員となったときでも、反組合的行為により除名されたときには右積立金を返還しない」旨の定めに照らし、原告らは右返還請求権を有しないものというべきである。
2 仮に前項の被告の主張が認められないとしても、被告組合は次のとおりこれを原告らにすべて返還するなどしている。
昭和四二年一一月の被告組合の中央大会において、第一次斗争積立金を返還する方針が決定されたので、被告組合では、同四三年八月五日各支部に対し右積立金の個人別明細表の報告を求め、右積立金の残高を照合した。次いで、同四三年一〇月の中央大会において、右積立金を同四三年会計年度末(同四四年八月末日)までに全額返済することとし、なお利息額の決定は中央執行委員会に一任する旨の決定がなされた。同大会時における右積立金の残高は、四三五万四四〇七円であり、これを本件関係の被告組合支部についてみれば、京都支部一五万〇三七二円(原告隠岐関係)、新潟支部七五〇〇円(原告永井関係)、福岡支部二一万四九五二円(原告林関係)、北九州支部二三万二六一七円(原告日比生関係)、高松支部〇円(原告中村関係)、岡山支部三万二五五五円(原告朝原関係)及び福井支部四万一八八三円(原告長岡関係)であった。被告組合は、右金員に中央執行委員会の決定した利息を付し、福岡、北九州各支部には同四四年二月一〇日、岡山支部には同年四月九日、京都支部には同年八月三〇日及び福井支部には同年二月二八日及び同八月三〇日にそれぞれ銀行振込等によって送金し、そのころ各組合員に対する返済を完了した。その結果、同四四年八月末日の同四三年会計年度末には一六万九三五二円の赤字が生じたが、これは一般会計から補填し、第一次斗争積立金の返還処理が完了した。もっとも、新潟支部関係だけは、組合員が右返還請求を放棄し、個人別積立額の明細表の送付もなかったので、被告組合は右会計年度末に同支部関係者は右請求権を放棄したものとしてこれを処理した。そして同四四年一一月の中央大会において第一次斗争積立金の返還事務が終了したことの報告がなされ、全員がこれを承認している。したがって、新潟支部関係者も右返還請求権を有しない。
四 被告の反論及び仮定抗弁に対する原告らの認否
1 被告の反論中、被告組合と会社との間において昭和三四年一一月に組合費等に関するチェック・オフ協定が締結されたこと、斗争資金規定第四条が原告ら主張のとおりの定めであること、同年四月の中央大会において、毎決算期に生ずる剰余金三〇パーセントを下らない額を犠牲者救援基金として積み立てる方針が決定されると共に同年度は財政基金中より二〇万円を同基金として積み立てるものとされ、同三五年五月の中央大会において被告主張の運用規定が設けられたこと、同三七年一〇月の中央大会において、組合規約中の組合費に関する定めにつき、被告主張のとおりの規定が設けられたこと、同四一年一一月の中央大会において右金額が被告主張のとおり改訂されたこと、組合費については、組合規約上、自然離脱者に対してもこれを返済しない旨定められていることは認めるが、同三七年一〇月の中央大会において第一次斗争積立金制度が廃止されたことは否認する。
2 被告の仮定抗弁中、昭和四三年一〇月の中央大会において、第一次斗争積立金を同四四年八月末日の同四三年会計年度末に返済する旨の決定がなされたこと、新潟支部には右積立金が返済されていないことは認め、その余の事実は否認する。
第三証拠(略)
理由
一 被告組合が会社の従業員をもって組織される労働組合であることは当事者間に争いがないところ、右事実に加え、(証拠略)の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
被告組合は、法人格はないが、組合規約を有し、同規約によれば、被告組合は、中央本部及び会社の支店単位に設けられる支部などから構成される、いわゆる単一組合であり、中央には、中央大会、中央委員会、中央執行委員会等、また支部には、支部大会、支部執行委員会等の各機関があって、中央大会が被告組合の最高機関であり、同大会は全組合員を代表する代議員によって構成されるが、代議員は、同大会の開催の都度、各支部所属の組合員三〇名につき一名宛選出され、中央執行委員会は被告組合の最高執行機関であり、被告組合の経費は、組合員の加入金、組合費、事業収入、寄附金及びその他の収入をもって充てられ、支部の経費は本部からの配付金、支部事業収入、寄附金その他の収入をもって充てられる旨定められていること、従来右支部として、札幌、函館、仙台、丸の内、東京、横浜、新潟、富山、金沢、福井、名古屋、大阪、工場、神戸、岡山、北九州及び福岡の一七支部があったこと、原告らは、第一ないし第八目録の「被告組合在籍期間」欄記載の期間中被告組合(但し、原告隠岐及びその選定者らは京都支部、同永井及びその選定者らは新潟支部、同林及びその選定者らは福岡支部、同日比生及びその選定者らは北九州支部、同中村及びその選定者らは高松支部、同岩崎及びその選定者らは広島支部、同朝原及びその選定者らは岡山支部及び同長岡及びその選定者らは福井支部)の組合員であったが、同「至」欄記載の時期に被告組合を脱退したこと、原告らは、右被告組合在籍期間中、右各目録の第一次、第二次各斗争積立金及び犠牲者救援積立金欄記載の金員を各支店において給料又は賞与からチェック・オフされ、同支部財政部長がこれを同支店から受領し、中央本部に納付したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
二 原告らの被告組合に対する第一次斗争積立金の返還請求について。
1 第一次斗争積立金が組合員個人の被告組合に対する預金的性質を有し、斗争資金規定第四条は、組合員が被告組合を自然離脱(退職・死亡又は非組合員)により非組合員となったとき、又は同規定が廃止されたとき、を右積立金の返還事由と定めていることは当事者間に争いがない。
2 原告らは被告組合を脱退したから斗争資金規定第四条に基づく前記第一次斗争積立金の返還事由が生じた旨主張し、被告は同積立金制度は原告らの脱退前の昭和三七年一一月の中央大会において廃止された旨主張するので、先ず右被告の主張について検討する。
成立について当事者間に争いのない(証拠略)によれば、次の事実が認められる。
斗争資金規定第七条は、同規定の改廃は中央大会において行う旨定めていること、昭和三七年一〇月の中央大会において、第一次斗争積立金は、組合員個人の預金であってこれを斗争資金として使用することができず、実質的には労働金庫から闘争資金を借受けるための担保資金にすぎなかったところ、当時右担保資金は六五〇万円の預金があって十分であったことと、他方、闘争時に実際に使用しうる闘争資金を積み立てて組合財政の強化を図るための第二次斗争積立金制度を設けることに伴なう組合員の負担を軽減する措置として、第一次斗争積立金の積立を廃止することが決定され、斗争資金規定第二条の組合員の積立金に関する定めが削除されたこと、その後同四二年一一月の中央大会において第一次斗争積立金を返還する方針が決定されたこと、更に、同四三年一〇月の中央大会において、同四四年八月末日までに右積立金を組合員に返還することが決定された(同四三年一〇月の中央大会において同四四年八月末日までに第一次斗争積立金を返済することが決定されたことについては当事者間に争いがない。)ことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定事実によれば、昭和四三年一〇月の中央大会において、第一次斗争積立金に関する斗争資金規定が廃止されるに至ったものと認めるのが相当である。
そうすると、原告らは、被告組合を脱退する以前に、斗争資金規定が廃止され、これに伴ない前記第一次斗争積立金の返還請求権を取得したものということができる。
3 次に、被告は、原告らが反組合的行為等のために被告組合を脱退したのであるから、斗争資金規定第四条所定の組合員が自然離脱によって非組合員となったときでも、反組合的行為により除名されたときには右積立金を返還しない旨の規定の趣旨に照らし、原告らは前記第一次斗争積立金の返還請求権を有しない旨主張するが、原告らの右返還請求権の取得が原告らの脱退とは関わりなく、また、その脱退当時には斗争資金規定が廃止されていたことは前記認定のとおりであるから、被告の右主張は、前提を欠き、採用することができない。
4 更に、被告は、第一次斗争積立金については組合員に返済済みであり、なお、新潟支部関係の組合員は右返還請求権を放棄した旨主張するので、判断する。
前記認定事実に加え、(証拠略)によれば、次の事実が認められる。
斗争資金規定第二条によれば、中央本部は、支部から納付された第一次斗争積立金を東京労働金庫に右支部名義の定期預金とし、同本部と支部とは個人別明細台帳を作成し、保管する旨定められているが、同本部は右台帳を作成していなかったこと、また支部の中にも組合員名簿さえも作成しなかったり、また、第一次斗争積立金が組合費と一緒に支店においてチェック・オフされていたことなどから、正確な個人別明細台帳を作成していないところもあったこと、昭和四二年一一月の中央大会において右積立金を返還する方針が決定されたことに伴ない、中央本部は、同四三年八月五日各支部に対して右個人別明細台帳に基づいて個人明細表を作成し、送付することを指示したこと、支部は、個人明細表を作成し、これを中央本部に送付したが、右明細表には不完全なものもあったこと、中央本部もまた、従来、各支部から右積立金が納入される都度、これを帳簿に記入し、また、組合員が退職などしたときには右積立金を返済し、その残高を一応把握していたが、必ずしも十全なものではなかったので、右支部から送付された個人明細表に基づいて右返還措置を講ずることとしたこと、同四三年一〇月の中央大会において、右積立金を同四四年八月三一日までに全額返済すること及び右積立金に対する利息額は中央執行委員会に一任する旨の決定がなされたこと、中央本部は、右個人明細表の積立金額に中央執行委員会の決定した利息を加えた金員を銀行などに振込み、各支部に送金したこと、これを本件についてみれば、同四四年一月一〇日福岡支部に二一万八〇〇〇円(前記被告組合の帳簿上の残高は二一万四九五二円)、北九州支部に二四万〇八〇〇円(同残高は二三万二六一七円)、同年四月九日岡山支部に三万二七〇二円(同残高は三万二五五五円)、同年八月三〇日京都支部に七万七四一〇円(同残高は一五万〇三七二円)、同年二月二八日及び同八月三〇日の二回にわたり福井支部に合計四万四八〇〇円(同残高は四万一八八三円)が送金され、右各支部は、そのころ右金員を右個人明細表どおりの組合員に交付し、その受領印の押捺された同明細表を中央本部に送付したこと、高松支部においては、被告組合の帳簿上右残高が零となっていたこともあったためか、右積立金は存在しないものとして取扱われたこと、新潟支部の場合には、右帳簿上にも一応残高が記載されていたにもかかわらず、個人明細表が送付されなかったので、中央本部は同支部に対し、電話で右送付方の連絡をしたが、同明細表が送付されなかったこと、同四四年一一月の中央大会において、被告組合の一般経過報告、運動方針、決算報告及び予算案について討議され、右決算報告の中で、第一次斗争積立金の返済が完了したことと新潟支部からは個人明細表の送付もないので、放棄したものとして取扱う旨述べられたこと、各支部から出席した代議員は右決算報告について異論も述べず、これが承認されたこと、その後原告らが脱退するまでの間、被告組合において第一次斗争積立金についてなんらの問題も生じなかったこと、
以上の事実が認められ、(人証略)中右認定に反する部分は、前顕証拠に照らして、たやすく信用することができず、その他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定事実によれば、福岡、北九州、岡山及び福井各支部関係の組合員についてはすでに第一次斗争積立金が返済されたものと推認するのが相当である。しかし、京都支部関係については、同支部から中央本部に送付された個人明細表に基づく送金額(但し利息を含む)が七万七四一〇円であり、中央本部の帳簿上の残高が一五万〇三七二円であってその差額に著しい差違のあることは右各資料が不十分であることを窺わせるうえ、右送金された金員が原告隠岐及びその選定者らに交付された点についてはなんらの証拠も存在しないことに照らし、右積立金の返還手続が遺漏なく行われたものとは認め難いし、また、高松支部関係についても、被告組合の資料が不十分なために右積立金残高が零とされ、その返還手続が行われなかったものと認めざるをえないし、更に、新潟支部関係についても、右認定事実だけでは、同支部関係の各組合員が、自己の右積立金についての返還請求権を放棄する旨の意思表示をしたものとまでは断定し難い。
そうすると、被告の右主張は、福岡、北九州、岡山及び福井各支部関係の原告林、同日比生、同朝原及び同長岡の第一次斗争積立金の返還請求については理由があるが、その余の京都、高松及び新潟支部関係の原告らについては失当である。
5 したがって、原告らの第一次斗争積立金の返還請求のうち、京都支部関係の原告隠岐主張の三万五六〇〇円(但し内訳は第一目録の1ないし16の選定者につき、「第一次斗争積立金」欄記載の各金額)、高松支部関係の原告中村主張の二一〇〇円(但し、内訳は第五目録1ないし3の選定者につき各七〇〇円)及び新潟支部関係の原告永井主張の一万六八〇〇円(但し、内訳は第二目録の1ないし7の選定者につき各二四〇〇円)についてはいずれも理由があるがその余の原告らの主張については理由がないものといわざるをえない。
三 原告らの被告組合に対する前記第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金の返還請求について。
原告らは斗争資金規定第四条又はその類推等に基づいて右各積立金の返還請求権を有する旨主張するので、判断する。
昭和三四年四月の中央大会において被告組合の毎決算期に生ずる剰余金から三〇パーセントを下らない額を犠牲者救援基金として積み立てる方針が決定されると共に同年度は財政基金中より二〇万円を同基金として積み立てるものとされ、同三五年五月の中央大会において全明労組合活動犠牲者救済規定が制定され、右基金の支出に関する運用規定が設けられたこと、同三七年一〇月の中央大会において、第二次斗争積立金制度が設けられると共に、組合規約中の組合費に関し、「組合費は毎月本給の二パーセントプラス一五〇円を徴収する。但し、内訳は一般組合費二パーセント、斗争積立金(第二次斗争資金)五〇円、犠牲者救援金一〇〇円とする」旨の規定が設けられ、その後同四一年一一月の中央大会において右組合費が同月より、「本給の二パーセントプラス八〇円、一時金からの臨時徴収は支給額の一パーセントプラス一〇〇円(年末、夏季とも同額)」と改訂されたことに伴ない、右組合費の内訳として、第二次斗争積立金が「月額二〇円と臨時組合費より五〇円(二回)」、また犠牲者救援積立金は「月額一〇円」とそれぞれ改訂されたことは当事者間に争いがなく、また、第二次斗争積立金は、第一次斗争積立金が組合員個人の預金であってこれを闘争資金として使用することができないため、同資金を積立てて組合財政の強化を図るために設けられた制度であることは前記認定のとおりである。
更に、(証拠略)の結果によれば、犠牲者救援積立金は全組合員が共同して組合活動による犠牲者を救済することを目的とし、組合の団結を強固にするために設けられた制度であること、第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金は、第一次斗争積立金とは異なり、中央本部の名義で預金され、会計上も右各制度の目的のために使用されることを担保するために特別会計とされており、組合員が退職したときでもこれを返還したことのないことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
そうすると、右各積立金は、その制度が設けられた経緯、目的、規定の内容及び取扱の実態等に照らし、第一次斗争積立金と同様の預金的性質を有するものとは断定し難く、組合費の一部であると認めるのが相当であるところ、組合規約上、組合費は自然離脱者に対しても返済されない旨定められていることは当事者間に争いがないから、かかる組合費の一部である第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金につき、預金的性質の第一次斗争積立金の返還に関する斗争資金規定第四条の定めが適用又は類推適用される余地はないものというべきであり、原告らの右主張は失当である。
四 原告らは、被告組合は、昭和四八年六月から同五〇年九月までの間に分裂し、その数を上回る原告ら二三六名が集団して権利を行使しているから、第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金につき、その積立額と同額の分割請求が許されるべきである旨主張するので、判断する。
前記認定事実及び弁論の全趣旨に照らし、原告らが脱退した前後においても、被告組合がいわゆる権利能力のない社団であり、原告らの脱退によって組合員数が減少したにすぎないことが明らかであるところ、かかる社団である組合の財産は、その構成員である組合員全員に総有的に帰属しているのであるから、右全員の同意をもって、総有の廃止その他右財産の処分に関する定めがなされない限り、組合員又はその脱退者が、当然に、右財産に関し共有の持分権又は分割請求権を有しないのである。しかるに被告組合の財産である第二次斗争積立金及び犠牲者救援積立金に関し、組合員及び原告ら脱退者の全員による総有の廃止等の決議がなされたことの主張、立証がないから、原告らが右各積立金について共有の持分権又は分割請求権を有するものとは認め難く、被告組合員数を上回る原告らが集団して権利を行使しているからといって、右結論になんらの消長をきたすものではない。
そうすると、被告組合が分裂したか否かなどの点については判断するまでもなく、原告らの右主張は採用することができない。
五 結論
叙上の次第であって、原告らの本訴請求は、被告に対し、原告隠岐が三万五六〇〇円(但し、内訳は第一目録の1ないし16の選定者につき「第一次斗争積立金」欄記載の各金額)、同中村が二一〇〇円(但し、内訳は第五目録の1ないし3の選定者につき各七〇〇円)、同永井が一万六八〇〇円(但し内訳は第二目録の1ないし7の選定者につき各二四〇〇円)及び右各金員に対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和五一年八月一四日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の原告隠岐、同中村及び永井の各請求部分並びに、同林、同日比生、同岩崎、同朝原及び同長岡の各請求はいずれも失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条第九二条、第九三条第一項を適用し、仮執行の宣言は相当でないからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。
(裁判官 古館清吾)